確定申告の準備のため、必要書類を整理している中で、ふるさと納税の寄付金受領証明書がないことに気づく場合もあります。証明書をなくしてしまったらもう控除は受けられないのかと焦ってしまうかもしれません。それではそんなときどうすれば良いのでしょうか。
今回は、ふるさと納税の寄付金受領証明書をなくしてしまった場合の対処法や注意点などを説明します。
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寄付金受領証明書とは?
寄付金受領証明書とは、ふるさと納税を行ったことを証明する書類です。
ふるさと納税を行った後、納税先の各自治体から寄付の申込者に送付されます。
様式やレイアウトは特に定められていないため、寄付先の自治体によって受領証明書に記載される内容は異なります。お礼文が一緒に載っていたり、必要事項のみのシンプルな文面だったり、また、紙のサイズなどもさまざまです。
ただし、ふるさと納税で寄付した金額や、自治体が寄付を受領した日付などはどの受領証明書にも記載されています。
確定申告においては、医療費控除や住宅ローン控除など、税金を安くするためのさまざまな控除を受けることができます。
ふるさと納税で寄付した金額は、このような控除の1つ、寄付金控除として確定申告に含めることが可能です。そして所得税や住民税などを安くすることができます。寄付金受領証明書は、寄付金控除の金額の裏付けとなる書類です。
また、何か問題があった場合に、寄付の事実確認などのため提出を求められることもあります。ただの領収書に思われるかもしれませんが、さまざまな場面で使用する大切な書類なのです。
手元に届くのはいつ頃?
寄付金受領証明書は、ふるさと納税を行った後に自治体から送られてくるものですが、具体的にいつ頃手元に届くのでしょうか。
結論としては、送付のタイミングは各自治体によって異なります。ただし、目安として、各自治体が送付時期をどのくらいにしているのか、WEBなどで確認することは可能です。
各自治体の状況を確認すると、最も多いのは、申し込み完了日から2ヶ月程度で送付をする自治体です。早いところでは入金確認後の翌開庁日、申し込み完了後1週間ほどで送付をするところもあります。また、年末にまとめて送付する自治体もあります。
ワンストップ特例制度を利用するなら寄付金受領証明書は不要?
ふるさと納税を税金の控除に利用する場合は、確定申告を行うほかに、ワンストップ特例制度を活用する方法もあります。ワンストップ特例制度を利用すれば確定申告をする必要はありません。そのため、確定申告時の必要書類となる寄付金受領証明書を、使わないだろうと判断し、すぐに捨ててしまう人も多くいます。
しかし、ワンストップ特例制度は場合によって利用できないこともあります。
その際は寄付金控除を受けるため、確定申告を行わなければならず、寄付金受領証明書が必要になります。それでは、どのような場合にワンストップ特例制度が利用できず、寄付金受領証明書が必要になるのか、ワンストップ特例制度の概要などとともに説明していきます。
1.ワンストップ特例制度とは
ワンストップ特例制度とは、ふるさと納税をした後、寄付先の自治体に申請することで、簡単に寄付金控除が受けられる制度のことです。
この制度を利用すれば、ふるさと納税の寄付金控除のために確定申告をする必要はありません。確定申告の申告書類を作成したり、必要書類をそろえる手間が省けるため、非常に便利です。
ワンストップ特例制度を利用するためにはいくつか条件があります。1月1日から12月31日まで、1年間の寄付先が5自治体以内であることは条件の1つです。もし同じ自治体に複数回寄付した場合は、1自治体とカウントします。5回以内の寄付ではなく、5自治体以内の寄付であるところがポイントです。
また、ふるさと納税の寄付金控除以外、確定申告をする予定がないことも、特例制度の利用条件です。
例えば、年末調整が行われるため、確定申告を必要としない給与所得者などが利用対象者にあてはまります。寄付先が多くない人におすすめの制度です。
ワンストップ特例制度は、手続きも難しくはありません。特例制度の申請書である「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」と、必要書類をあわせて、ふるさと納税した自治体に送付すれば完了です。
なお、マイナンバーと本人確認のための書類も、申請書と一緒に送付する必要があります。マイナンバーカードを持っている場合は、マイナンバーカードの表面とマイナンバー確認書類、裏面を本人確認書類として、カードの表裏の写しのみで必要書類とすることができます。
マイナンバーカードがなく、通知カードのみ持っている場合は、通知カードの写しと、運転免許証やパスポートなどの身分証のコピー、あわせて2点で確認書類にします。
特例制度を利用するにも申請書類は必要ですが、申請書の記載内容はそれほど多くなく、必要書類もすぐに用意できるものです。
確定申告で申告書を記入したり税額を計算したり、さまざまな種類の添付書類を用意するよりも簡単であると言えるでしょう。特例制度で寄付金控除を受ける場合は、所得税は税額に変わりなし、住民税は寄付した翌年の住民税から直接控除されます。
2.ワンストップ特例制度でも寄付金受領証明書は必要
ワンストップ特例制度を利用すれば、確定申告をすることなく寄付金控除を受けることができます。寄付金受領証明書は、確定申告の際に必要な書類なので、確定申告をしないのであれば基本的には使う可能性は少ないでしょう。
ワンストップ特例制度は、制度を利用できないケースもあります。
例えば、1年間でふるさと納税の寄付をした自治体が、6自治体以上になった場合は、ワンストップ特例制度を利用することはできません。それまでワンストップ特例制度の申請書類を提出していても、寄付先が6自治体以上になった時点で、特例制度の対象から外れてしまい、1年間のすべての寄付に関し、確定申告で寄付金控除の申告を行わなければなりません。
そして、ふるさと納税に関する寄付金控除以外の、何かほかの理由で確定申告が必要になった場合も、ワンストップ特例制度を利用することはできなくなります。
給与所得者は雇用先で年末調整が行われ、所得税の過不足を精算するため、基本的に確定申告をする必要はありません。
しかし、給与以外の所得が一定額発生した場合や、医療費控除など、年末調整では控除できない控除を申告する必要があれば、確定申告をしなければなりません。
そして、確定申告をした時点で、ワンストップ特例制度は申請書類を提出していても無効になるため、確定申告時にふるさと納税に関する寄付金控除を改めて申告しなければ、税金の控除はされません。
このように、ワンストップ特例制度を利用しても、確定申告が必要になる場合も多々あります。
寄付金受領証明書は再発行できる?
ワンストップ特例制度が利用できないため、確定申告を行わなければならない場合、寄付金受領証明書が手元になければどうすれば良いのか悩んでしまうでしょう。寄付金受領証明書をなくしたとき、再発行はしてもらえるのでしょうか。
基本的には再発行してくれる自治体がほとんどですが、再発行に関することは各自治体の判断となります。
1回のみ再発行が可能な自治体や、あるいは再発行は受け付けていない自治体もあります。寄付金受領証明書の再発行が必要になったら、寄付先の自治体へ連絡し、再発行が可能か、可能であればどんな手続きが必要か確認してみましょう。
問い合わせ先や担当部署は、自治体のウェブサイトなどで確認してみてください。
再発行依頼で注意すべきこと
寄付金受領証明書の再発行では、注意しなければならないこともあります。まずは、発行にかかる日数です。再発行された寄付金受領証明書が手元に届くまで、どのくらいの日数がかかるかは各自治体によります。
しかし、1日2日で再発行した証明書を送ってもらえるとは考えない方が良いでしょう。
自治体の再発行処理の流れや繁忙度合いにより、再発行に要する日数は変わります。特に駆け込みのふるさと納税などが多く、通常よりも業務が多くなる年末や、寄付金受領証明書の再発行に関する連絡が増える確定申告の時期などは、自治体での再発行に通常の時期よりもさらに時間がかかる可能性があります。
確定申告は毎年期間が決められており、原則として2月16日から3月15日までです。(もし開始日や最終日が閉庁日と重なっていた場合はずれ込む場合もあります)期間内に申告するためには、必要書類を早めにそろえる必要があります。
寄付金受領証明書の再発行に日数がかかり、申告が期間内に間に合わないということにならないよう、証明書がないことに気づいたら、すみやかに再発行に関する手続きをとりましょう。
なお、自治体によっては再発行した寄付金受領証明書の送付のため、再発行依頼者から自治体あてに、切手を貼った返信用封筒を送らなければならない場合もあります。この場合は、依頼者から返信用封筒が届くのを待って、再発行した証明書を送るので、返信用封筒を郵送する分の日数もかかります。
紛失のほかに再発行が必要なケース
寄付金受領証明書の再発行が必要なケースは、紛失した場合だけではありません。例えば、住所の番地や部屋番号の間違いなど、誤った内容でふるさと納税を申し込んだ場合、寄付金受領証明書も誤った内容で作成されるため、後に再発行が必要になることがあります。
また、申し込み後に転居で住所が変わったり、結婚して苗字が変わるなど、当初の記載事項に変更があった場合も、再発行が必要になることがあります。確定申告では、旧住所や旧姓の必要書類を使用することも可能です。
ただし、実際はそれぞれの地域の税務署によって見解が異なります。旧姓・旧住所でもそのまま使える可能性や、住民票など変更の経緯が分かる書類を合わせて提出を求められる可能性、できる限り最新の新姓・新住所に変更した必要書類を添付するよう求められる可能性などが考えられます。
所轄の税務署ではどのような取り扱いなのか、確定申告の前に直接連絡し、確認してみましょう。そして確認した内容によって、必要があれば寄付先の自治体に、記載事項変更のための再発行について問い合わせをしましょう。
再発行を防ぐために申し込み時に注意すべきこと
寄付金受領証明書の再発行は、自治体に連絡して可否や手続きの方法を確認したり、場合によっては返信用封筒など郵送のやり取りが必要だったり、手間や時間がかかるため、できる限り避けたいものです。
ふるさと納税の申し込み時に気を付けることで、証明書の記載内容の誤りや変更を防ぎ、再発行を回避できる場合もあります。
例えば、寄付金受領証明書の氏名に関して注意が必要です。寄付金受領証明書は、ふるさと納税の申込者の氏名で発行されます。
寄付金受領証明書を確定申告の必要書類として添付する場合、証明書に記載されている氏名は、申告をする納税者と同一でなければなりません。
例えば、夫が確定申告をする際、ふるさと納税の寄付金を控除に含める場合は、寄付金受領証明書の氏名は、夫の名前になっている必要があります。
その場合は寄付金受領証明書の再発行も不可能です。ふるさと納税の申し込み時は、確定申告をする場合の利便性も考えつつ、誰の名前で申し込むかを決めましょう。
また、住所の間違いなどにも気を付けるようにしましょう。番地や建物名、部屋番号などは間違いが起こりやすい箇所です。
特に返礼品は届くことを楽しみにしている方も多いでしょう。申し込み時に住所を誤ってしまうと、配送した品が宛所に尋ねあたらないと返送されたり、あるいは違う住所に配達されてしまい、トラブルを招く可能性もゼロではありません。スムーズにふるさと納税が完了するよう、ぜひ申し込み時には少し注意して、間違いを防ぎましょう。
確定申告に間に合わない場合は?
寄付金受領証明書の再発行を申し込んだ後、手続きに日数を要し、現物が確定申告の期間内に届かない場合もあるでしょう。その場合は確定申告の控除に寄付金を含めることを諦めなくてはならないのかと言うと、そんなことはありません。次に紹介するような方法で対処が可能です。ではどのような対処法があるのか、具体的にみていきましょう。
1.振込票の控を添付する
寄付金受領証明書がない場合の対処方法1つ目は、振込票の控えを添付することです。
ふるさと納税の寄付金を入金すれば、郵便振替の半券や振込依頼書の控えなど、必ず振込票が作成されます。この振込票の控えを、寄付金受領証明書の代わりに確定申告書の添付書類にすることができます。
添付書類として使用するためには、振込票の中に、寄付者の氏名と住所、寄付金額、寄付日付、そして当該振り込みがふるさと納税の寄付である旨印字されていることが条件です。
なお、寄付日付は振り込んだ金融機関の受領印などでも大丈夫です。振込票はすぐに捨てず、もしもの時のために保管しておきましょう。
2.電子申請「e-Tax」を利用する
寄付金受領証明書がない場合の対処方法2つ目は、確定申告の際、電子申請「e-Tax」を利用することです。確定申告は、申告書を手書きで記入またはWEB上で作成し印刷した後、必要書類とともに税務署に持参や郵送をして申告する方法があります。
これらの方法で申告する場合は、税務署が開いている時間に出向いたり、郵送するための準備をしたり、時間や手間がかかります。
e-Taxは24時間いつでも確定申告ができるので、日中なかなか時間が取れない人も、自分の都合の良いタイミングで申告ができ、非常に便利です。ただし、e-Taxを利用するためには、事前に準備が必要です。e-Taxでの申告は、マイナンバーカード方式とID・パスワード方式の2種類あります。
なお、ICカードリーダーはICカード対応のスマートフォンの使用に代えることもできます。もう1つはID・パスワード方式です。この方式でe-Taxを利用する場合は、事前に税務署でID・パスワードを発行してもらう必要があります。
3.改めて還付申告を行う
受領証明書がない場合の対処方法3つ目は、確定申告の期間後、改めて還付申告を行うことです。税金の申告は、確定申告の期間しか行えないというイメージがあるかもしれません。
しかし、還付申告自体は、過去5年前の分までさかのぼって申告することができます。5年より前の税金に関しては時効として扱われるため、納め過ぎた税金があった場合でも還付などは行われません。
しかし、時効になっていない期間の税金について納め過ぎた分がある場合は、いつでも還付申告をすることが可能です。ふるさと納税の寄付金控除をすることで税金が還付される場合は、寄付金受領証明書の再発行分が届いたら、確定申告の期間が終っていたとしても、還付申告することをおすすめします。
せっかく寄付金控除で税金が安くなるのに、ペナルティのお金を支払うことになったら元も子もありません。確定申告の書類を作成して税額の計算を行い、自分の場合は還付金が発生するのか納税額が発生するのか、確認したうえで申告しなければならないタイミングを見極めましょう。
寄付金受領証明書はいつまで保管する?
それでは、寄付金受領証明書はいつまで保管すれば良いのでしょうか。説明してきたとおり、ワンストップ特例制度を利用していても、確定申告をしなければならなくなる場合もあります。
もし確定申告の必要が生じても、再発行に関する手間がかからないよう、寄付した年の翌年の確定申告の時期までは必ず保管しておきましょう。e-Taxの利用や、振込票の写しの使用などで、寄付金受領証明書が手元に残る場合は、「住民税課税決定通知書」で、実際に住民税から寄付金分が控除されているか、しっかり確認ができるまでは保管しておきましょう。
また、ワンストップ特例制度を利用して寄付金控除を行った場合も、もし何らかの理由で税金にうまく反映されていないなどのトラブルが起こったとき、寄付金受領証明書を使用する可能性もあるため、住民税の通知書で税額を確認するまでは証明書を保管しておくことをおすすめします。なお、通知書は寄付した年の翌年5~6月頃に届きます。
寄付金受領証明書はなくさないように気をつけよう
寄付金受領証明書は確定申告で寄付金控除を申告する場合、必要な書類であることはもちろん、何か問題があった場合に提出を求められることもあります。
単なる受領証だと考え、使うことはないだろうとすぐに捨ててしまうと、万が一必要になったとき、再発行やそのほかの対処法などで対応しなければならず、手間や時間がかかります。寄付した翌年の確定申告の時期や、住民税の通知が届く時期までは、もしもに備え、処分せず取っておく方が賢明です。
ほかの書類などに紛れてうっかりなくさないよう、もし必要になったときはスムーズに取り出せるところに大事に保管しておきましょう。